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オープンラボ
広島大学 総合科学部 自然探究領域 液体非晶質半導体研究室

波の反射 、超音波パルスの測定


 海岸では波が寄せては返し、池に石を落とせば波紋が広がっていく。波は日常よく目にする現象です。波は物体とは異なる面白い性質をもっています。例えば、2つの山型の波が衝突しても、お互い重なりあった後、何事もなかったようにすり抜けていきます(パルス波の重ね合わせ)。また、山型と谷型の波が衝突したときは、重なり合った瞬間は波が消失します(山と谷の重ね合わせ)。岸壁に打ち寄せた波はそれ以上進めなくて反射されます。そのときの海面の動きは、端が自由に動くことのできる境界での波の反射(自由端反射)と同じです。固定されたロープや、ギターの弦のように、固定された境界で反射される場合もありますが、この時は、山型で打ち寄せた波は、谷型の波となって反射されます(固定端反射)。弦の振動では、反射された波が入射する波と重ね合わさり、特定の波長の波だけが安定に振動を続けます。このような波を定常波といいます。弦の振動で観測される定常波の動画を示します。一方、片方の端が自由端の場合も入射した波と反射波が重なり合って定常波ができます(動画)。これは左端が閉じ、右端が開口した管(笛)の中の空気の振動と同じです。これらのように、振動している物質(波の現象ではこの物質のことを媒質といいます)に端(境界)があると、波はその地点で反射して入射波と反射波が重なり合うことになります。波動実験器で境界がない条件をつくるには、端に減衰器を取り付けます。すると、この動画に示すように、波長を変えながら波を送っても、左から右への進行波が常に観測できます。短い波長から長い波長に戻していっても、同じように(動画)左から右への進行波が常に観測できます。

波動実験器の説明 音速測定の原理と超音波実験装置の写真

音と超音波パルス実験
 音は空気が疎になったり密になったりする振動が空気を媒質として伝わる現象です。人が聞き取れる音は、1秒間に数十回から2万回の空気の振動と言われていますが、加齢とともに高い振動数の音は聞き取りにくくなります。実際、音楽で扱われる音は、1秒間に440回振動する「ラ」の音を基準として、ピアノの音階なら1秒間に約30回から4000回振動する音を音階として発生し、実際には倍音とか高調波と呼ばれる高い振動数の音が混じることで音色の美しさを醸し出します。ところで超音波は人間の耳には聞こえないさらに高い振動数の音波のことです。暗闇でも飛び回るコウモリが超音波を使って周りの状況を把握しているという話は聞いたことがあるのではないでしょうか。健康診断では、超音波を使って内蔵や胎児の映像を観察できるようになってます。
 ここでは超音波を使った液体や固体の音速測定について紹介します。さらに詳しく理解したい人は超音波実験装置の説明を見て下さい。超音波実験装置では、山型のパルス波を発生して、それが音速を計りたい物質を通り抜け、その端で反射されて戻ってくるまでの時間を測定することで、「速さ=距離÷時間」の式を使って音速を決定します。ここでは、水の音速測定の様子を紹介sます。日本では幸い水は水道の蛇口をひねると出てくるありふれた液体ですが、地球上では、乾燥化、砂漠化のため水が大変貴重な地域が多くあります。そのようなことに加えて、分子式がH2Oで表される水は、非常に特異な性質をもつ液体でもあります。水が0℃で固体になると体積が膨張して、氷が水に浮くことは当たり前のように思っているかもしれませんが、液体が固まったときに密度が小さくなることは、いつも起こることではありません。大部分の物質は、溶けると体積が膨張して密度が低下するので、固体の方が底に沈みます。水の密度が4℃で最大になることを知っている人が多いのではないでしょうか。
 水を伝わる音の速さは約1500m/sで、空気を伝わる音の速さ340m/sより5倍近く速く、音波は魚群探知機などに使われています。さて、蒸留水の音速も普通の液体とは異なる温度変化を示します。温度が高くなると大抵の物質は柔らかくなり、それに応じて物質を伝わる音の速さも遅くなります。ところが水の場合は、0℃から70℃までの温度範囲では温度が高くなると音速が速くなり、70℃から100℃の温度範囲で、普通の液体のように、温度が高くなると音速が遅くなる変化を示します。つまり、水の場合は70℃付近で音速が最大となります。この様子を超音波で測定してみましょう




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